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Zippo好きの方であれば誰でも聞いた事が有ると思いますが「ベトナムジッポー

ジッポーは Made in USAなのに何故にベトナム...??

ベトナムジッポーと称される「Zippo」はベトナム戦争という歴史的背景を大きく背負っています。

ベトナム戦争は1960年から1975年の15年にも及ぶ長い期間、ベトナムの独立と南北統一をめぐって戦われた戦争です。

そもそも、共産主義勢力の拡大を防ぐため、北ベトナムと対峙する南ベトナムの戦争でしたが、南ベトナムを支援するアメリカが中心となり大規模な軍事介入を行い、実質的には共産主義勢力(ソビエト連邦、中華人民共和国)資本主義勢力(アメリカ)が背後にあっての「代理戦争」と呼ばれた戦いでもありました。

この戦争においての社会評論は別問題として、Zippoの生産国でもあるアメリカ(軍)は自らの利益の為に遠いベトナムの地で起こしたこの戦争で戦死者58,000余名(派兵数全体の約10%)と1,700機の航空機、その他にも大量な兵器の損失を出し、その結果膨大な戦費負担は経済を直撃しました。

経済的な戦費負担だけでなく、実際に戦地に赴任していた兵士達は、国内世論などによる「何の為の戦争か?」という既成の価値観をも覆す辛い戦いでもあったと言われています。


Zippo ビジターセンターに展示されているZippoとアメリカ軍兵士についてのディスプレイ

その辛い赴任先のベトナム戦火においてアメリカ兵が祖国を離れ、辛い日々の中、心の拠り所として愛用していたのが「ベトナムジッポー」の由来と言われています。

兵士達にとってZippoは単なるライターとしてではなくミラーにしたり暖をとるカイロにしたり日常生活の道具であると同時に自分のオリジナルティを表現するための身分証明書であったりしたといわれています。

当時のアメリカ軍のベースともなっていたベトナム南部、サイゴン(現在のホーチミン市)には器用なベトナム人が簡単な機械でアメリカ兵士の待ち込んだ無地のZippoを好きなデザインで加工してくれる出店があり、そんな小さなマーケットでベトナムZippoはベトナム人の手作りにより一点一点作られアメリカ兵士に愛用されていました。

ほぼ毎年、Zippo本社のあるUS/ペンシルベニア州/ブラドフォードでの祭典に参加させていただき、かなり多くの現地のコレクターやバイヤーの方々と交流をさせていただいておりますが、実はUSではいわゆる「ベトナムジッポー」は彼ら自身、その様な歴史的背景を知っている為にコレクターやバイヤーの方はほんの一握りです。

以前、有名なベトナムZippoのコレクターと話す機会があったのですが、当時アメリカ兵が愛用していた本物のベトナムZippoを集める為に彼は復員してきた方に直接合って交渉し分けてもらっているそうです。
ただし辛いベトナムで過ごした兵士達は自分の愛用したZippoを簡単にはわけてくれずに大変苦労されているとの事でした。

そりゃそうですよね....立場が逆であれば自分の愛用したZippoを簡単に手放すワケはありませんよね。

では、何故「ベトナムジッポー」がここまで有名になってしまったか??
これは日本のメディアがこのブームを発起したといっても間違いではないかと思います。

ミリタリーファッションブームという事もあり、小物のZippoライターもその流行に乗りファッションの一部として騒がれ日本のバイヤーがこぞって買い付けを行く事になります。
ただ、本来の意味を持つベトナムジッポーには上記の理由により、数に限りがあります。

すると...どうなるか...??
「売れるんなら作ってしまえ!!」と利益のみを追求する者が偽物を作る事になります。

前置きが長くなってしまいましたが、そんなベトナムジッポーの現地ベトナムの旧サイゴン=ホーチミンでの現状を知りたく、2007年3月17日〜に行ってまいりました。

3月だというに出発前日の16日に東京で初雪が記録されるなど、気温10度の東京から約6時間半のフライトで辿り着いた縦に長いベトナムの南部の中心地・ホーチミン市の気温は34度!!
多少なりとも覚悟はしていたものの、いきなり冬から真夏への気候差でした。

この時期は乾季で、雨は全く降らない時期ではあるのですが、湿気ある灼熱の気候には、空港から一歩足を踏み出したとたんに汗をかき出す始末。
また、空港が市内に比較的近い場所にある関係もあり、空港前の駐車場を兼ねるスペースは送迎車とオートバイの排気ガスで澱んでいる様にも感じました。

ベトナムは社会主義ではあるのですが、経済は自由化され、人件費が高くなってしまった新たなるノックダウン先として日本企業が新空港を建築中など、経済成長が期待される国ではあるのですが、実際の街中は、先進アジア諸国と比較すると、まだまだの国家です。

市内に入ってまず驚かされたのが、オートバイの数!!
この暑さですので、街中は昼夜問わず歩いている人は、観光客がほとんどで現地の人はオートバイでの移動です。
移動....といってもこれだけの台数のオートバイ、ガイドさんに何処へ移動するのかと聞いてみたところ「ただ涼んでいるだけですよ!!」との事!?

これだけの暑い気候でありながらも、エアコンの普及率が5%以下というこの街では暑さを凌ぐ為にオートバイ(スクーターが中心)で街中をぐるぐると流しているそうです。

また、スクーターをカスタマライズするのが、若者のファッションでもそうです。

ちょっと郊外へ出ると、自動車ディーラーは国道沿いに数多くあるのですが、街中はタクシーや業務用のバンやトラックが中心で乗用車は一部の階層のみが所有する高級車のみで「自家用車」というニーズはこの国にはまだ先の様です。

オートバイの数は夜になると更に増え、2人乗りは当たり前。小さな子供を抱えた家族5人で100cc程度の小型スクーターで街中を我先にと闊歩(!?)しています。

Zippoですが、ベトナムの何処に行けばお目にかかれるか...??

ベトナムのお土産としてもベトナムZippoは日本人に有名ですので、やはり人の集まる観光の中心地??....という事で観光スポットの市民劇場に面した「レロイ通り」
小さなお土産屋が並ぶこの通りに何件かジッポー(型ライター)を扱うお店がありました。




さすが、観光メッカのメインストリートだけあって、道端でコレクションケースを持ち込んでの路上販売など、観光客をターゲットとした「街角のジッポー売り」などもいます。

この界隈は観光客相手のお土産店ですので、専門店ではなく、ベトナムお土産の一品目として販売している店がほとんどです。

後半でベトナムジッポーの種類を解説させていただきますが、この界隈で「ベトナムジッポー」と称して売られているモノは、Zippo社製造ではない、ライター本体そのもの(ほぼ)100%ニセモノ!!のZippoの形を模倣したオイルライターです。
日本人観光客や出張族相手のお土産屋さんですので、カタコトの日本語で話しかけてきますが、ご注意下さい。

中には、ベトナムジッポーではなく、通常の正規現行ラインを取り扱う店もあります。
こちらは、ベトナムの地域柄などの他では入手できないZippoもありますので、純粋にお土産でZippoを購入となるとコチラの現行品の方がオススメです。
ただ、値段を聞いてみると他の輸入ブランド品同様で、米国USドルのプライスと同様、結構高めのお値段。
ディスカウント交渉もあまり効かない価格設定の様です。

市内でもワーカーの平均賃金が40,000円(日本円換算)/月というこの国では本物のZippoライターは高値の花といったところでしょうか....

この、中心地レロイ通りからバスターミナル方面に歩いて15分程、観光スポットからやや離れた商業地区に「ヤンシン市場」があります。


ヤンシン市場は、他の観光市場と異なり、電気部品や測定器、市民の足/オートバイの部品屋などが入った、日本でいう昔の秋葉原のパーツ街といった場所。
お客さんも観光客ではなく、現地の人が中心です。



しかし、この市場の一角はガイドブックなどに紹介されているミリタリーグッズの宝庫という事もありZippoを扱う小さなお店がひしめきあった「ベトナムジッポー」の宝庫でもあります。


市場内では、中国や韓国などと比べると、何が何でもしつこい程強引に売りつけてくるという事がないのがベトナムの印象でした。

また、他のアジア諸国と比べて、歴史的背景から比較的英語が通じる国柄の為、私の低レベルの英語力でも意志の疎通ができるのが、嬉しいところです。

ヤンシン市場内で入り口に近く場所的にも他店に比べて優位に立っているお店が「HAI & DO」というミリタリーショップ。
この店主さんは2002年に発売された「Zippo Lighter Catalog-ジッポーの愛し方-」(マルカイコーポレーション発行)の「ベトナムZippo」のレポートに大きく紹介されており、人なっこい風貌も助けだってか、かなり日本人に「ベトナムジッポー」を売っているとの事。
日本で発行されたZippoに関する書籍や「地球の歩き方」などの日本語書籍が置いてある事も商売上手です(笑)
名刺フォルダーにも「なぁ〜る程!!」と思わせる日本人の名刺がきちんと整理されていました。
また「Zippo Lighter Catalog-ジッポーの愛し方-」のご自分のお店が紹介されているページはしっかりとプラケースに入れられ目立つ位置に掲げられています。

ただ...「信用第一 ベトナムで一番安い!!」としっかりマジックペンで書いているのは怪しげで逆効果かと思いますが.... 事実、60年代のZippoのボトムスタンプさえ把握できていないあやふやな知識はどうかと思いますが...(笑)

市場内は、どの店も置いてあるベトナムジッポー(型オイルライター)のセールストークや知識、値段は似たり寄ったり。(下記参照)

この様な市場は小売りだけですので、どの店も同じ様なデザイン(....というか日本の書籍で紹介されているデザインのコピー)がほとんどですので「どこかに卸元があるハズ!! ソコに行けば何かしら面白い情報があるのでは ...」と思うも、お店で「Zippoの卸元を教えてくれ」と聞いたところで教えてくれるハズもありません。(苦笑)

空調も入っていない市場で大汗をかき、判断力とやる気が無くなった頭を冷やす為にエアコンのあるCafeで一服し生気を取り戻し....

例えば、東京でZippoを取り扱う小さなお店が集まり繁栄している「アメ横」を考えた場合、注文取りや納品を行う為に、そのすぐ近隣に問屋さんはあります。

「ヤンシン市場」の場合もこの形態の小売り店舗の原理上同様にさほど離れていない市場の近辺に卸元があるのでは!?

....と市場の周りの商店が並ぶ細い通りを歩いていたところ...問屋さんとはいわずまでも、何気にそれらしき構えの店がありました。

当初は店番のオバチャンと話をしていたのですが、英語がわからない様で、一度奥に引っ込むと代わりに店主らしき、男性(やっぱり怪しげ)が出てきました。

ただ、しばらく話をしたところZippoの知識がかなりお持ちですので、初めて「日本でZippoのWebShopを運営している。今回はベトナムZippoの取材で来ている」旨を言うと、対応がガラリと変わり店の奥のソファーに通されて冷えたコーラが出されるといった(こちらでは)もてなされぶり。(Thanks!!)

話を聞いてみると、案の定、市場内のお店どころか、日本では大阪、韓国などにもまとめてベトナムジッポーを卸しているとの事。
ご自慢のNikon製のコンパクトデジカメやE-mailのやりとり、ベトナムには佐川急便の支店があるので発送も問題なく大丈夫!!との話でした。(ホントかい!?)

こちらではUS/ペンシルベニアの話と交換に、ベトナムZippoの話を聞く事ができました。
また、彼の店で見せてもらったデザインサンプル....??


本当にサンプルか?? それともフェイクを作らせる為のデザインシートなんじゃないのぉぉ??...と思える程、ベトナム柄のみならず、コカコーラZippoやラッキーストライクZippoなどの人気の手彫り用の柄が描かれていました。(苦笑)

ただ、在庫のZippo(本体は本物)もさすがに随分持っていました。

彼の話と、市場で聞いた話などをまとめてみるとベトナムで売られているベトナムジッポー(..と称されるライター)は下記の通り大きく分別できる様です。

 1. Zippoの形をした全くの偽物ライター
文字通りZippoの形はしているものの、US/Zippo社の製造のZippoライターではなく、ジッポーの形を模倣したオイルライターです。
Zippoを使用している方であれば、ボトムスタンプが無いものや刻印されているとしても質感が悪く、一目見ただけでZippoではないと判断できるのですが、Zippoを全く知らない方が現地の店員さんに「ベトナムZippoだよ。安いよ。」と言われてついつい購入してきてしまう筆頭です。
現地での販売価格
 2ドル〜10ドル

 2. Zippoのボトムスタンプの入った偽物Zippoライター
本体にベトナムZippoっぽいデザインの彫り込みや、弾丸などのエンブレムが取り付けされた一見「カッコイイ」...いわゆるベトナムジッポー(コピー品)
ボトムスタンプにベトナム戦争時代の斜体ロゴマークが刻印されたオイルライターです。しかし、本体は1.同様、US/Zippo社で製造された本物のジッポーライターではありません。
Zippoのロゴが入っているので、いわゆるブランドの不正模倣品(コピー品)です。
ベトナムのお店で売られるいるほとんどがこのコピーZippoで (1.)との差がありますので、お店では「本物のベトナムZippoだよ」と言って売られていたりします。

よく見ればボトムスタンプの質や本体の質感が本物のビンテージZippoと全く違いますが、60〜70年代のビンテージZippoをお使いで無い方は区別がつきにくいかと思われますので、注意が必要です。
現地での販売価格
 10ドル〜70ドル

 3. 本体は本物のZippoライター
ライター本体はベトナム戦争当時の1960〜70年代にUS/Zippo社で製造された本物のジッポーライターです。
ベトナム柄は別問題としても、純粋にビンテージZippoとしての価値はあります。

通常お店の表には並んでおらずに奥のショーケースなどに置いてあり、上記(1.〜2.)で騙されなかったお客さんにだけ出す(苦笑)様ですが観光客などが購入する為か、値段はかなり高めです。

確かに様々なベトナムZippoのデザインの彫り込みはあるものの、上記で解説させていただきましたが「ベトナム戦争当時にアメリカ兵が実際に戦地で使用していたZippo=ベトナムZippo」と判断する場合、デザインの彫り込みは、そもそも手彫りの機械での彫り込みでしたので現在でもいくらでもできる為、本来のベトナムZippoであるかは不明です。
現地での販売価格
 50ドル〜150ドル

「ベトナム戦争当時にアメリカ兵が実際に戦地で使用していたZippo=ベトナムZippo」という定義を除外し、
「ベトナム柄のオイルライター=ベトナムZippo」
とした場合、コピー品云々は別問題とするとベトナムでは安価で雑誌などに紹介されている様な手彫りタッチのオイルライターは購入できます。

これらを単にデザインが格好いいからといって愛用したりコレクションする方も数多くいらっしゃるかと思います。

また、これらが心もとない業者や個人の方によって輸入されファッション系のショップやオークションなどで販売されています。

個人の価値観の問題ですので、意見を押しつける気はありませんが、「ベトナムジッポー」....単なるミリタリーファッションブームに便乗した流行ではなく、ベトナム戦争という歴史的背景と、その中でZippoがどのように活躍していたのかを理解された上でコレクションをされる事を、平和と共に望む次第です。