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上記の画像をご覧になられて、どう思われますか?
程よく使い込まれた独特のビンテージ感、人気のジーンズメーカーの刻印、1977年製を意味するボトムスタンプ(底面の刻印)
この程度のサイズの画像で見る限り...なかなかいいですよね!
某インターネットオークションで1977年製ビンテージZippoとして出品されていたモノです。

しかし!! 実はこのZippo...大きな落とし穴があるのです !!

昨年、中国/北京の街で販売されていた新品のコピー商品のZippoにつきましてはレポートさせていただきましたが、ビンテージと称される古いUSEDのZippoにつきましても様々なコピー商品(Fake Zippo)が出回っています。

ビンテージのフェイクといっても、様々なパターンがありますが、大きく下記の様に分類されます。
(1)
Zippo本体はUS/ペンシルベニアのZippo社で製造され、意匠デザインのみを人気のキャラクターやベトナム柄、企業マークなど無許可で模倣加工した物。
(2) Zippo本体自体が全くの偽物であるもの。また意匠も模倣加工した物。

(1)はZippoライターには間違いございませんので、フェイクと言いきってしまうと語弊かもしれませんが、いずれにせよ「正規品」という意味からは外れるZippoではないかと思います。

今回は、完全はコピー商品である(2)についてまとめさせていただきたいと思います。

Zippo本体自体が全くの偽物のフェイクZippo...

コストや手間を考えると、製造されているのは日本国内ではないと考えられますが、新品のフェイクZippoとビンテージのフェイクZippoの大きな違いは購入者のターゲットです。

アジア諸国を中心に販売されている新品のフェイクZippoのターゲットは所得差があるために日本人ではなく現地の若い方です。
それに対し、ビンテージのフェイクZippoのターゲットは、日本人観光客であると考えられます。(例えば中国などではZippoに限らず衣服や装飾品はビンテージという感覚が薄く「派手な新品」が好まれる傾向にあります。)

最も有名なのが「ベトナムZippo」と称されるベトナム戦争時に派遣されていたアメリカ兵士が愛用していたZippoを模倣したオイルライター。
このベトナムZippoのフェイクのターゲットは正に日本人です。
中には(1)のパターンもありましたが、街中の一般的なお土産屋さんで売っているのは100円ショップでも売っているようなオイルライターに専門誌などで紹介されたベトナム兵士が現地で彫ってもらったデザインを真似た彫り込みがされています。

左右のZippoを見比べて見て下さい。


如何でしょう?

左の画像は、US/ペンシルベニア州/ブラドフォードで製造された本物の1978年製のZippoです。
表面のエッチングペイントは、同じブラドフォードの街で産声を上げたKendall(ケンドール)社のロゴマーク。企業が自社の販売促進などのPR目的によりZippo社に発注をかけ製造されたZippoです。

それに対し右の画像のライターですが、こちらが今レポートの中心となるべき、本体自体が全くの偽物のFake Zippoです。

比べて画像をご覧になられたのみでその違いがおわかりになるでしょうか?

本物と比較すると、底面の刻印に多少いびつさがありますが、単体で見た場合はなかなかその加工の違いが判断できるものではありません。

昔のフェイクZippoはケースの素材に鉄が使われていたりクロームメッキが全く違う質感であったりでしたが、こちらのフェイクZippoは本物と同じ真鍮にクロームメッキが施されています。
また、インサイドケースの細かいパーツなどはかなり本物に近く本物と比較してみてもその違いが判断できない程かなり精巧に作られています。

それでは、フェイクを判断する基準はどこにあるか?

作る側も「騙し」を目的として作っているので、昔のフェイクに比べかなりパーツの精度は上がってきており、簡単に見分けはできずらくなってきています。
ただ、このフェイクに限らず「ボトムスタンプ(底面の刻印)が真偽を判断する大きなポイントになります。

Zippo社で製造された本物の刻印は製造年ごとにプレスの成形型がありプレスされます。
しかしフェイクはさすがにそこまでのコストをかける事ができない様です。
一見肉眼ではあまり差を感じないとしても、ルーペで拡大してみるとその違いは歴然です。


本物(画像左)はプレス加工ですので、プレスされた面が綺麗に仕上がっていますが、フェイク(画像右)は回転式の刻印器、もしくはガイドレールを使用したリューターのような回転刃で削りながら移動させる加工している様で、その回転刃の形跡が判断できます。
また、細かい文字などは綺麗に再現できず、刃の太さを替えない限り基本的には文字の太さが一定のままとなります。



インサイドケースの刻印についても同様でルーペで拡大してみるとその差がよくわかります。


その他、インサイドケースを取り出してパーツ類を細かく見ていくと下記の様に、ヒンジのパーツにも1996年以降に使用されている形状が使われるなど1970年代に製造されたビンテージと比べてみると形状などに違いがあります。



如何でしょう?
拡大して見ると「なるほど〜!」とお解りになっていただけたかと思います。

ただ、ライターとして本来の「着火する」という機能についてはZippo自体かなりシンプルな構造ですので、割り切って使うのであればフェイクといえシンプルなオイルライター、問題はあまり無いようです。

さて、では次に

何故この様な人気ロゴのビンテージZippoが作られる様になったか?
です。

ここからはあくまで私(店主)の個人的な推測の域なのですが、前に説明させていただいた「ベトナムZippo」、雑誌などにも紹介され特に若い方にかなり人気が高まった時期がありました。
ただ本物は、ベトナム戦争当時に兵士が愛用していたZippoですので、数は決まっています。
需要に対し供給が足りないマーケットにおいて、その人気を逆手に取り「ベトナムZippoのフェイク」が作られるようになった訳です。

しかし、その「ベトナムZippoのフェイク」も「偽物がほとんど」という情報が浸透し、人気が治まってしまった今、当然その「ベトナムZippoのフェイク」を作っていた方法が、そのまま人気のキャラクターや企業ブランドの「ビンテージ/フェイクZippo」の製造に移行していったのではないかと考えられます。

ベトナム戦争でアメリカ軍がベトナムに本格介入したのが1962年から1975年頃ですので、Zippoのボトムスタンプは斜体ロゴが使用されていた時代です。
年代を示す斜線のみを変えれば上記の様な1977年製示すボトムスタンプにする事は難しい事ではありません。
また「ベトナムZippoのフェイク」を作る時のノウハウ「戦下を表現するボロボロにする仕上げ」も今回ご紹介した様なビンテージ故活きて来るという事ではないでしょうか?

「おい!○○やっ、zippoの文字を彫る刃、研いどけよ〜〜!! それと 今作っているのは、昔作ってたベトナム柄のライターじゃないんだから、そんなに強く道ばたで踏んづけてボロボロにしすぎるんじゃないぞ〜〜!! ...しかし何で日本人ってわざわざボロいライターを欲しがるんじゃのう??」

アジアの何処でこんな声が聞けるかもしれません(苦笑)



追記
2006/06/09更新
上記のレポートに対し、当店BBSにYahoo!! Auctionsで類似したZippoを入手された方より下記の内容の投稿をいただきました。

「最近出回り始めている新種のフェイクで、ジッポー本体は本物を利用し、それに手を加えてビンテージに見せかけるという手の込んだ方法が取られています。
まずケースですが、キャンドボトムの底にプレートを半田付けし、それに手彫りで昔の刻印が彫られています。
ボトム刻印は1978年のイタリックロゴですが、内側から見ると新ロゴがうっすらと確認できます。
ヒンジは修理痕があり、ヒンジ形状は1985年までのタイプですが、果たしてこれが純正かどうかは疑問です。
柄は面積が広いこともあり、着色がかなりラフです。
インサイドユニットはこれはほぼ部品としては純正品のようです。
両面の刻印を削り落とし、1968-1976年刻印が改めて掘り込んであります。
ただ、以前見たものでは、本物の部品と中国製と思われる部品の組み合わせという手間のかかったものもありました。」
情報/画像 ご提供>>ALEPH'S ZIPPO DATABASE

本レポートでご紹介させていただきましたZippoですが、サンプルとして一時的に入手したものですので、既に当方の手元には無く、再度詳しく解析する事が出来ず誠に残念です。

しかしヒンジのパーツが1996年頃以降に採用されているタイプですし、インサイドユニットにつきましては他のフェイクZippoにはコピーできない独特の湾曲を描くカムの形状などから、BBSにご投稿いただきました

現行品の本物のZippoに不正加工を施してビンテージに見せかけたZippo

と同様の可能性もあると思われます。

不確実な情報によりご利用の皆様に混乱を与えるような内容の公開、深くお詫び申し上げます。